新規事業でSaaS導入を考えるとき、多くの議論は「どのツールがいいか」「おすすめはどれか」に寄りがちです。
しかし本当に重要なのは、今、そのフェーズで入れていいかどうかです。
同じSaaSでも、フェーズが違えば正解にも地雷にもなります。
この記事では、新規事業を4つのフェーズに分けて、「まだ入れない方がいい状態」「条件付きで検討していい状態」「入れないと詰む状態」を整理します。
※ 本記事は、以下の考え方を前提にしています。
▶ なぜ多くの新規事業は、SaaSを入れた瞬間に失敗確率が上がるのか
フェーズ0|検証前(アイデア・仮説段階)
このフェーズでは、事業仮説がまだ曖昧で、顧客像も定まっていません。
やることは日々変わり、正解よりも「気づき」を得ることが最優先です。
結論はシンプルで、SaaSは入れません。
この段階でSaaSを入れる理由は、ほぼ「不安を減らしたい」だけです。しかし新規事業の初期に必要なのは、速く試し、速く失敗し、速く捨てることです。
このフェーズでは、次のような手段で十分です。
- Googleスプレッドシート
- Notion
- 手作業
- Slack+メモ
整っていない状態を許容できないと、新規事業は前に進みません。
フェーズ1|PoC(初期検証)
PoCフェーズでは、仮説を実データで検証し始め、顧客接点も少しずつ見えてきます。ただし、売り方や作り方は頻繁に変わります。
結論としては、基本的にまだ早いフェーズです。
この段階でSaaSを入れると、「検証」より「運用」が主役になりがちです。
特にMAやCRM、分析ツールは、「入れればちゃんとした事業に見える」という心理で選ばれやすいですが、実際には設定に時間を取られ、データが足りず、何も判断できない状態になりやすい。
例外として検討してよいのは、次の条件を満たすものだけです。
- 無料で使える
- すぐに捨てられる
- 設定がほぼ不要
このフェーズでは、検証を加速する道具以外は持たないのが原則です。
フェーズ2|初期PMF(小さく回り始めた状態)
このフェーズでは、顧客像がかなり固まり、同じ作業を何度も繰り返すようになります。
人の負荷が目に見えて増え、手作業がボトルネックになり始めます。
ここで初めて、SaaSが「邪魔」ではなく「武器」になり得ます。
ただし、条件付きです。
入れてよい条件は次の通りです。
- 課題を1文で説明できる
- 手作業が明確なボトルネックになっている
- 業務フローが3ヶ月以上安定している
このフェーズで向いているのは、業務を単純化するSaaSや、データを集めるだけのツールです。
人の判断を置き換えるタイプは、まだ早いケースが多い。
目的は「楽をする」ことではなく、再現性を作ることです。
フェーズ3|拡張・スケール
人が増え、案件数が増え、属人性が限界に近づくフェーズです。
ここでは、SaaSを入れないこと自体がリスクになります。
この段階でSaaSが必要になる理由は明確です。
- 人が増えても品質を保つため
- 情報共有コストを下げるため
- 判断基準を揃えるため
ただし重要なのは、「今までのやり方を壊さないSaaS」ではありません。
一度壊して、再設計できるSaaSを選ぶことです。
フェーズ別まとめ(判断早見表)
| フェーズ | 結論 |
|---|---|
| 検証前 | 入れない |
| PoC | ほぼ入れない |
| 初期PMF | 条件付き |
| 拡張 | 入れる前提 |
SaaS導入判断で一番危険な思考
フェーズに関係なく、一番危険なのは次の考え方です。
「いつか必要だから、今入れておこう」
新規事業では、「いつか必要」は、ほとんどの場合「今は不要」を意味します。
まとめ|SaaSはフェーズを無視すると毒になる
SaaSは万能ではありません。
フェーズを飛ばし、検証を省略し、判断を道具に委ねると、SaaSは事業の失敗確率を上げる装置になります。
だからこそ考えるべきは、どのSaaSかではなく、今どのフェーズかです。
これが、このサイトの基本スタンスです。
次の記事予告
次はさらに具体に踏み込みます。
「とりあえずMA」を入れて地獄を見る新規事業の共通点
ここから、具体ツール名・失敗条件・選び方を扱います。

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